靖国問題専門部会より活動報告
2024年12月13日(金)、高田別院お食堂に於いて開催された「靖国問題専門講座」について報告いたします。
新野和暢氏(三重教区泉稱寺住職・名古屋大谷高等学校教諭・同朋大学非常勤講師・教学研究所嘱託研究員・名古屋教区教化センター研究員)を講師にお招きし、「ヤスクニ問題の現在地」という講題でお話いただきました。
概要
「ヤスクニ問題の現在地」という講題は、靖国問題が真宗門徒である私たちにどのような課題となるのかということを考えるためのものです。
靖国問題が社会の課題ではなく宗教だけの課題であるとき、私たちは仏教の考え方になじまないと認識します。しかし、そのような態度は純粋に現実社会と向き合うことを困難にしてしまいます。このようなことから、「ヤスクニ問題」は宗教と習俗(社会)の間の課題であり、靖国神社という特定の宗教を問題とする課題ではないと考えます。
この問題を考えることをきっかけに、「門徒さんに伝えたい仏教は何か?」「真宗大谷派僧侶とは?」ということをあらためて考え、見つめなおし、深めてほしいと思っています。
そして、詰まるところ「真宗は社会的現実とどう向き合う事ができるのだろうか? 」という問いかけへと繋がっていくのではないでしょうか。
また、「ヤスクニ」とは単に過去の問題ということではなく、私にとっての現在の課題です。ゆえに「現在地」です。純粋に現実社会と向き合ったとき、真宗の教えから問われてくる私たち自身の課題は、真宗門徒一人ひとりの信心の課題を意味しています。
現実社会の「ヤスクニ問題」から明らかになってくる私たちの現在の課題は、「信心をいただけた」とか「信心をいただけない」とかいうような観念的抽象的な事柄を意味するのではありません。
それは、この身の事実として明らかになってくる私たちの生活の問題です。
質疑・意見交換
Q:大谷派の戦争加担は国からの圧力によるものか?
A:国からの圧力はないことはないが、戦前の暁烏暁は「僧衣の神官」ともいわれ、天皇の御稜威の世界を自発的に称賛している。
Q:「私が靖国だ」(和田稠)と言われることについては?
A:「信の回復」において自身を深信するところに開かれる世界。大事な自覚である。
Q:神社を抱える町内会での住職としての行動や檀家総代が氏子総代であること等については?
A:真宗の本義と現実社会との乖離には困難なことが多いが、コンセンサス(合意)を得るための対話が求められている。
Q:平和のために全ての戦没者を追悼するような国の施設は必要ないのでしようか?
A:必要はないと考えている。国が戦没者を追悼する場合に感謝する「ありがとう」という言葉が使われるが、そこには「またお願いします」という意図が含まれている。戦争の再生産への危惧。
Q:宗派として戦争に加担してきたが、そのことをわが身の問題として考えていく観点は?
A:社会の動きの中で宗教がどう関わっていくのかというとき、個々の選びが問われてくる。教えに私を学ぶのではなくて私の都合で仏教を学んでいることの危うさが常にあるが、念仏の教えのなかで現実社会の様々な課題と対峙する自身の選びが問われてくる。
最後に
靖国問題専門部会では、「専門講座」と「基礎講座」を年に1回ずつ実施しております。2025年5月17日(土)~19日(月)には上越市民プラザを会場に「基礎講座」として「戦争といのちを考える」戦争資料展を開催いたします。こちらも是非、ご参加ください。