ネットDE仏教〔第九回〕(最終回)
仏教の未来を考える -メタバースとAI-
2023/05/31 更新
高田教区発行の『響流』も今回が最終号となりました。現在のメンバーで担当して参りました各コーナーは一旦終了という形になります。
そこで「ネットDE仏教」最終回は、現在のIT(情報技術)と仏教を組み合わせた可能性についての記事をまとめてみました。
1.メタバース
「メタバース(metaverse)」という言葉を最近よく耳にするようになりました。簡単に説明すると、コンピュータ上に構築された仮想の3次元空間の世界のことを言います。パソコンゲームやテレビゲームをする人は何となく想像できるかと思いますが、パソコンやスマートフォン等からインターネットを介して、多くの人が同じ仮想世界に入り、自分の分身(アバター)を操作しながら仮想世界を移動して他の人と会話(チャット)したり、様々なイベントに参加したりすることができます。
オンラインゲームも一種のメタバースと呼ぶこともできますが、現在多くの企業が参入し始めている「メタバース」というのは、仮想世界を利用して商業サービスを展開しようとするものです。具体的には、仮想世界でライブイベントやセミナー等を開催するといった、リアルタイムにサービスを提供するものです。実際に足を運ばずとも、それと同様な体験が可能となる点で、メタバースは人と人の交流の場を提供する未来のサービスなのです。
コロナ禍によって、人と人が直接会うということができない時期がありました。そのような中で確立された生活スタイルの中の一つは、インターネットを利用するというものでした。学校ではオンライン授業が試行され、また企業ではオンライン会議等を利用した在宅ワークが取り入れられました。そうした中でメタバースが注目を浴びたのも、そのような環境があったからではないかと感じます。
仏教に関わることで言えば、このコロナ禍によって様々なことが一変してしまいました。そこでやはり注目されたのがインターネットを利用したものです。インターネットを通じて行う研修会や会議、そして仏事そのものもオンラインで行うお寺もありました。私たち真宗大谷派でも、法話をYouTubeで行う試みが多くなされています。このコーナーを作るきっかけとなったのもコロナ禍の影響と言って過言ではありません。
インターネットと仏教の関係性が深まる中考えられたのが、メタバースと仏教の結びつきです。つまり、メタバースの仮想世界にお寺を作るというものです。世界中どこにいても、また、実際には足を運びづらいけど仮想空間なら・・・という人でも、自由に参加できるのがメタバースなのです。既にその試みをなされているところもあるようです。
もちろん、実際に人と人が会うことが一番大事であることは間違いないでしょう。いくら機能的で便利であっても、現実世界でしか伝わらないものがあります。しかし、人と人が繋がる一助となるような、実際にお寺に足を運ぶきっかけとなるならば、その利用価値も大きいのではないかと思うのです。
(参考記事)
【12/27】令和5年は「仏教✕メタバース」元年に!?YouTuber僧侶とメタバースクリエイター僧侶のメタバース交流会開催! | 彼岸寺 (higan.net)
2.AI(ChatGPT)
AI(人工知能)は、コンピュータが人間のような思考を持って人間とのやりとりを行う技術です。映画やアニメの世界で登場するロボットがまず思いつきますが、コンピュータそのものが人工知能であると考えることもできます。AIという言葉は1950年代に使われはじめ、割と古い歴史を持つものです。
ところで最近、ChatGPT(チャットジーピーティー)といったAIが話題になっています。AI技術の中でも、コンピュータと自然な会話(チャット)ができることが挙げられますが、2022年末に登場したばかりのChatGPTは、OpenAIという企業が開発した言語モデルでの一つで、大量の文章を学習して自然言語処理や文章生成などのタスクをこなすことができます。そのため、ChatGPTは質問応当やチャットボットなどの分野で注目されています。
【AIが仏教の説法をする?】
これまで仏教の説法は、仏教の教えに精通した僧侶などの専門家が行ってきました。しかし、ChatGPTのようなAIが仏教を学習することで、AIが説法をする時代が来る可能性があります。AI技術の進歩により、AIが人間の感情を理解し、対話や説法を行うことができるようになれば、ChatGPTによる仏教の説法も現実的なものになるでしょう。
また、ChatGPTは大量の文章を学習することができるため、膨大な数の仏教の経典や教義を学習することができます。そのため、僧侶や専門家が行う説法よりも、より正確な教えを伝えることができる可能性もあります。
しかしながら、AIによる仏教の説法には、いくつかの問題もあります。例えば、ChatGPTは学習した文章をもとに文章を生成するため、人工知能の特性上、本来の教えと異なる内容を生成することがあるかもしれません。また、仏教は、その背景にある文化や歴史を理解した上で、正確に解釈する必要があります。そのため、AIによる説法を受ける際には、その限界や問題点について注意する必要があります。さらに、AIによる説法を受ける際には、誰がプログラムを作成し、どのように教育されたかに関する情報が必要です。
また、AIによる説法は、人間との相互作用を必要としないため、心の成長や精神的な成長を促す僧侶や専門家の役割を完全に置き換えることはできません。仏教は、個人的な経験や体験に基づいた側面を持ち、人間との相互作用を通じて深く理解することができます。そのため、AIによる説法が人間との相互作用を置き換えることはできないことを理解する必要があります。
最後に、AIによる説法は、人間に対して何らかの形での依存を生み出す可能性があります。仏教は、個人の自己覚醒と自己変革を促すことが目的であり、AIによる説法によって、個人が自己変革をすることができなくなる可能性があります。
【ChatGPTの可能性】
上記の記事【AIが仏教の説法をする?】の部分は、実はChatGPTに「ChatGPTが説法をする時代が来るかもしれないという内容の記事を書いてほしい」と依頼し、文章を生成させて作ったものです(一部文意を変えない程度に改編)。このようにChatGPTは、人間の要求を満たしてくれる文章をごく自然に生成することができます。一見しただけでは、人間が書いたものかAIが書いたものか判別することは難しいです。
しかし注意しておきたいのは、現時点のChatGPTの性能では、膨大な情報を蓄えているにもかかわらず、必ずしも正確な情報が得られるとは限らないことです。現段階では、もっともらしい回答がChatGPTから得られたとしても、その情報の正確性の判断は利用者自身に委ねられているのです。試しに、「浄土真宗の教義について」聞いてみたところ、真宗の僧侶であればしないような回答も含まれており、仏教などの専門的分野に関してはまだまだ改善の余地があるといった感想です。
ですから、上記の記事はあくまで「AIが作成した、参考までの記事」ということでご理解いただくようご留意ください。
まだまだ性能向上の余地があるChatGPTですが、この知識量と自然対話が可能なChatGPTが仏教など様々な分野に広がっていく可能性は十分考えられます。そうしたなか、今までのような人と人が直接交流する場もまた大切なものであることは忘れてはなりません。
※ChatGPTは現在無料で利用することができます。利用に関しては、上記の「情報の正確性」の問題に注意してください。
3.さいごに
インターネット(IT)と仏教というテーマで、全9回にわたってこのコーナーを作成して参りましたが、時代が進むにつれて科学技術が進歩すると同時に、人々が持つ宗教観というものもまた変化していくものだと感じます。しかし、仏教そのものは遠い昔より人から人へ伝わっていくもので、変わってはならないものでありましょう。その変わらない仏教を、変化する時代のなかでどのように伝えていくのか、その時代に合った伝え方があるのではないかと思います。新しいものを取り入れると何か大事なものが失われるのではないかという懸念がありますが、私たちが必要としていることの本質を見極めていくことが重要ではないかと感じます。