同朋社会部門 新田直美(第17組光照寺)
2024年11月18日、三条別院において標記研修会が開催されました。始めに部門長の清水寛志氏より、「本研修会は、差別問題を中心に社会問題を私たち自身の課題として捉え、その克服を願うために毎年開催している。今年は『関東大震災における朝鮮人虐殺の問題を考える』というテーマで企画した」と挨拶がありました。
講師には「九月、東京の路上で-1923年関東大震災ジェノサイドの残響」の著者である加藤直樹氏をお迎えし、『朝鮮人虐殺の史実が現代に問うもの』という講題でご講義いただきました。
加藤氏は講義冒頭で、研究を始めるきっかけとなったのは、2000年当時の東京都知事・石原慎太郎氏の「三国人発言」を聞き、強い衝撃を受けた事だったと述べられました。その後、関東大震災時の流言の発生、虐殺の様相と拡大について、時系列に沿い当時の資料をもとに詳細に説明されました。
特に、「なぜ虐殺が引き起こされたのか」という問いについては、「差別の論理」「治安の論理」「軍事の論理」という観点から深く検証されました。そしてこの問題が過去の出来事にとどまらず、現代においても危惧すべき課題であると強調されました。
さらに、関東大震災から学ぶべき教訓として、以下の二点が示されました。
- 災害時における差別流言を許さないこと
災害や戦争、パンデミックなどの不安定な状況では、流言が発生しやすい事を認識し対策を講じる必要がある - 日常から民族差別が許されない社会を構築すること
世界的にも日本国内でも外国人差別のデマが横行しており、それが暴力につながる危険性を認識すべきである
最後に、加藤氏は「100年前虐殺された一人ひとりには名前があり、家族があった。その人生を最大限の想像力をもって犠牲者の気持ちを想像することこそが“差別を許さない力”となるのではないか」と締めくくられました。
この研修会を通じて、近年のコロナ禍における誹謗中傷の問題を思い起こし、現代社会においても災害や不安定な状況下では差別や偏見がいかに深刻な問題を生むかを改めて実感しました。そしてその危険性はいつも私の中にあることも見過ごせないと思いました。
なお、今年度同朋社会部門の事業として本研修会の内容をコンテンツ化し、これをもとに各組や寺院での研修会を開催いただけるよう準備を進めております。完成次第、教区通信にてお知らせいたしますので、ご活用いただければ幸いです。